Créer un site internet

やる。いまから大事な

Le 26/10/2023

野村あらためジョンは、活髮 意外にも蟻通のいうとおりに子どもらとおなじ木箱に腰をおろした。

 

「話、というのはほかでもない」

 

 蟻通は、全員をみまわした。

 

 島田がいなければ、自然と主導権を握るところなどさすがである。

 

 蟻通は、新撰組では島田同様最古参の隊士である。しかも、永倉や原田や斎藤といった組長たちと同格の実力がある。それなのに、隊士たちの面倒をみるのが面倒だっていう理由だけで、組長にならなかったのである。

 どれだけ近藤局長や副長がすすめても、隊士の方が楽だといい、組長になることをつっぱねた。

 

 ちょっとかわっている。

 

 が、「面倒くさいからヤダ」とか「隊士の方がお気楽だ」なんてわがままをいうのも、状況が許さなくなってきた。

 

 組長クラスが根こそぎ去ってしまい、まとめる者がほかにいなくなったからである。  

 

 つまり、組長にかわるまとめ役が必要になったわけである。

 

 副長も、かれや島田に頼らざるを得ない。実力はさることながら、信頼できる者でないといけないからである。

 

 蟻通もそれは重々承知しているのだろう。

 

 だから島田が不在の場合は、自然とリーダーシップを発揮するのかもしれない。

 

 もっとも、それも周囲が蟻通を認めているだからこそである。

 

 これが嫌われ者とかであれば、リーダーシップをとろうものならソッコーでディスられるであろうから。「土方さんと俊冬のことだ」

 

 蟻通は、シンプルかつスピーディーに核心に迫った。

 

「主計、このあとの戦況を教えてくれ」

 

 かれに頼まれ、今後のおおよその状況を伝えた。

 

「新撰組は、七里浜などで戦った後に弁天台場で籠城、結局はそこで降伏します。いまから一か月ほど後の話です。その数日前の話ですが、蟻通先生、あなたも討死することになっています」

 

 この際だから、蟻通には再度認識しておいてもらおうと告げた。かれは、わかっているというようにちいさくうなずいた。

 

「箱館山で……。回天隊から移ってきたさんとともに、です」

「蟻通先生。場所と時期がわかっています……」

「わかっている」

 

 俊春がいいかけたところに、蟻通はまたうなずいた。

 

 じつは、おなじ時期に弁天台場で隊士の数名が死ぬことになっている。その面子もどうにかする必要がある。

 

「わたしのことは兎も角、土方さんのことを」

「はい。副長は、弁天台場にむかうところで被弾します。そして、そのまま……」

「へー」

 

 って安富、リアクションが「へー」って、いったいなに?

 

 ってか、ほかのみんなも『反応薄っ!』なんですが?

 

 子どもらも、副長が石につまずいて転んでしまった的な反応である。つまり、顔色一つ、表情一つかわっていない。

 

「あの、みなさん驚かないのですか?」

「なにゆえだ?」

「安富先生。なにゆえって、副長が死ぬんですよ。それなのに、『へー』とか反応薄すぎるんじゃないでしょうか?」

「驚いた!」

「おおおおおっ」

「副長が死ぬ?」

「びっくりだよね」

「サプライーズ」

「ファックでシットだ」

 

 大人も子どもも、いっせいにわざとらしいリアクションをとった。

 

 副長が気の毒すぎる。

 

「それで?」

 

 それから、安富が尋ねてきた。

 

 かれは、副長の死よりも愛するお馬さんたちの様子が気になるらしい。

 

 これが、副長の乗る「竹殿」が死ぬかもって告げたのだったら、かれは半狂乱になったにちがいない。

 

「副長は、どうもその死を受け入れているような感じなんです」

 

 まさか、これで「ふーん。それならそれでいいのではないのか?」っていわれたら、おれもその先どう話をしていいのかわからない。

 

 が、全員沈黙している。

 

 一応、いまいったことをかんがえてくれているんだろう。たぶん、であるが。

 

「ならば、簀巻きにして厩にでも閉じこめるなりくくりつけておけばいいではないのか?ようは、そこにいなければいいのであろう?」

「安富先生、まぁそうなんですけど……。たしかに、副長はそこにいないようにすることはできるはずです。問題は、たまがその副長の影武者を務めるつもりだということなんです」

 

 そう告げた瞬間、その場の空気が凍りついた。絶対零度的に凍りついたのである。

そのことをはじめてしった者たちの顔色が、こちらが戸惑うほどかわっている。

 

「かれは、史実にならうために副長のかわりに死ぬつもりです」

「そんなことがあってたまるものかっ!」

 

 怒鳴り声とともに、安富に胸元をつかまれてしめあげられた。

 

 厩の中で、お馬さんたちが怯えて鼻を鳴らしている。