「いつも冗談ばっか言って、皆の人気者で、気さくで優しくて強くて…とっても格好いんだよ!それが藤堂平助!藤堂さんは裏切ったわけじゃない!」
市村は美海をチラッと見る。今にも泣きそうな顔に市村はオロオロしだした。
「せ…先輩…」
そうだよ。藤堂さんは裏切ったわけじゃない。
「沖田さん!」
「はい?」
沖田は微笑みながら首を傾げた。
「ちょっと厠行ってきます」
美海はキリッとした顔で言った。
「ついていかないで大丈夫ですか?」
コクリと美海は頷いた。
「いってらっしゃい」
ガラッ
パタン…
美海の走り去る音が聞こえた。
「あの…沖田隊長…」
申し訳なさそうに市村は立っている。
「あそこまで言うと妬けるなぁ」【改善脫髮】四招避開活髮療程陷阱,正確生髮! -
沖田は困ったように笑った。
本当に静かな夜だ。
現在時刻はとっくに12時を回っていた。
もう日が変わったのだ。
油小路周辺の家々は眠っているわけではない。今回は新撰組貸し切りだ。
その家々の一角。
「……遅いな」
「直に来るだろ」
油小路の御陵衛士一掃に抜擢されたのは皮肉なことに原田、永倉だった。
仲間の最期は仲間の手で。
そういう意味ではない。
近藤は別の意味で二人を選抜した。
恐らく二人もちゃんと理解している。
「…………」
珍しく原田は静かだ。
原田は暗殺は今回二回目である。
もっとも、新撰組側はいつもの羽織なのだが、もはやここまで人数がいると暗殺ではない。
永倉は真っ直ぐ外を見ていた。
相変わらず景色は変わらない。
お願いだ。来ないでくれ。平助!
二人共、そう願わずにはいられない。
だが言葉には出さない。
しかし、そんな儚い願いは簡単に裏切られた。
「隊長…!」
隣の隊士が小声でつついてくる。
永倉と原田は顔を上げた。
「……来たな」
油小路の四つ辻の真ん中では、今来たであろう御陵衛士が駕籠に伊東を入れている。
平助は!?
必死に目で探す。
いるのは他の御陵衛士だけで、駕籠の前で泣いている。
原田は気色を明るくした。
「しんぱっ「いや。いる」
永倉は四つ辻から目を離さない。
「え?」
原田が目をやると、角から藤堂が現れた。
「く…」
原田は顔を歪めた。
永倉は表情を変えない。
藤堂は伊東の亡骸を前に、泣くどころか悲しむ素振りさえ見せなかった。
藤堂は真ん中に立った。
「いるんでしょ?」
シンッ…
息さえできない。
そのくらい空気は重い。
別に藤堂は殺気を込めているわけではない。
逆に、もう人形のように目が虚ろなのだ。
「相手になるよ。出てきなよ」
藤堂が続ける。
永倉は左右の隊士に頷いた。
油小路での全指揮は永倉と原田にある。
ザッ…
民家から隊士がわらっと出た。
その数約40。
永倉と原田は中にいるままだ。
それを見ると、しゃがみ込んでいた御陵衛士も涙を拭って立ち上がった。
人数に差がありすぎる。
だが双方負けるつもりはない。
池田屋でも浪士は約30、新撰組は約5人だったが、勝利を手にした。
どうなるかは分からない。
「知らない顔が多いけど、本気で来なよ?」
実は、今回の油小路に向かったのは大体が新参隊士なのだ。
藤堂達には会ったことがなかったため、実力がどれ程か全く分からない状態だ。