赤禰はごめんと消え入りそうな声で謝って目を伏せた。三津は三津でお見苦しいところをと謝りながら着物を着た。
「寒いのに何でこんなとこで……。」
「体拭くだけやったし台所の方が誰も来おへんって思ったんですけど。」
「すまん……。そっかセツさんと湯屋って思ったけど行けれんのやったな……。」
「そうです。これのせいで。」
三津はわざわざ羽織った着物を滑らせて背中を見せた。晒を巻いてるから肩から少しだけ覗く程度の傷だが,赤禰はそれをしっかり目に焼き付けた。
「あの先鋒隊の人らもですけど何で喧嘩っ早いんですかねぇ。何で武力で何とかしようとするんでしょ?……って奇兵隊に武器が行くように同盟結ぶ手助けした私が言うのもなんですけど。」
三津は手早く着付けながら,独り言として戦はやだなぁと呟いた。
「そうやな。戦は嫌やな。」
その言葉と共に,三津は背後から温もりに包まれた。【改善脫髮】四招避開活髮療程陷阱,正確生髮! - 赤禰の腕がしっかりと三津を抱きしめた。それを理解した三津の心臓は破裂しそうなぐらい激しく脈打った。
「たっ武人さん?」
「そりゃ武器はある方が万が一の時には安心やろうが,その万が一が最初からなかったらいいそっちゃ。」
赤禰の息が首筋にかかった。自分に話し掛けてるようだが,三津にはそれが赤禰の独り言のようにも聞こえた。
「体冷やさんように。おやすみ。」
言葉と同時に解放された三津が振り向いた時には赤禰は足早に台所を出てしまっていた。
赤禰らしくない行動に呆然としていたが,寒さに身を震わせていそいそと入江の待つ部屋に戻った。
部屋に戻れば入江が布団の中で微睡みながらお帰りと言ってくれた。それからすぐに握ってくれと手を伸ばしてきた。
三津は布団に潜り込んでからその手を握った。
お互いにおやすみと声を掛け合って目を閉じた。会話はなくても良かった。こうして近くに存在を感じられるのが幸せだった。
翌日,三津が掃除をしていると高杉と赤禰の言い争う声が聞こえてきた。三津はこっそりその声がする方へ近寄った。
「やけぇそんな生温いやり方が通用せんけぇ今こうなっとるんやろ?話が通じんけぇ武力行使なんやろが。何と言おうとあいつらは絶対征伐しに来るっちゃ。だったら迎え撃つだけやろが。」
「でもその征伐さえなければ争わんで済む。征伐自体食い止める手立ては考えんのか。」
「はぁ……。やっぱりお前とは根本的な話が通じん。」
「それはこっちも同じじゃ。」
赤禰は強い口調でそう吐き捨てて門の方へ歩いて行った。高杉は袖に手を突っ込んで目を閉じて天を仰いだ。三津が声を掛けようか悩んでいたら高杉はふらりと立ち去ってしまった。三津は何を言い争っていたのか事情は分からないがもやもやを抱えたまんま掃除を続けた。
「嫁ちゃん!息抜きに外出ようぜ!」
「山縣さん。……そうですね。是非とも。」
ちょうどいい所に来てくれたなと思った。山縣ならさっきの二人について話が出来る。塾生の頃の話も聞けるはず。
さぁ行きましょうと三津が歩き出そうとした時,山縣が覆い被さってきた。
「ぎゃあ!変態!離れてっ!!」
「許せ!嫁ちゃんが素直に俺の誘いに乗ったんが嬉しいんじゃ!!」
喜びを表すぐらいいいだろうと山縣はぎゅっと三津を絞め上げた。
「あ!?山縣さん何しとるんよ人妻に!!」
三津の悲鳴を聞いたセツが走って来て山縣の後頭部をぶん殴った。お陰で三津は窒息せずに済んだ。
次三津に触ればただじゃ置かないからねと鬼の形相で忠告され,山縣は大人しく二人の買い出しに同行した。
三津は町へ向かう道中で高杉と赤禰が言い争っていた話をした。どんな反応をするのか窺えば,二人はさほど珍しい事ではないと言った。