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「疲れたり何か異変があればすぐに言う

Le 01/04/2024

「疲れたり何か異変があればすぐに言うんよ?三津さん無理しそうやから。」

「はーい。」

気の抜けた返事に大丈夫かと心配になるが入江も何の策もなしに三津を連れ歩く訳じゃない。三津の健脚も知っている。あとは精神的な問題だ。

三津は好奇心が旺盛で感受性も豊かだからなんて事のない峠の道でも景色に感動し,そこらに生える草花にさえ興味を持って嬉々とする。

「楽しそうやな。」

「楽しいですよ?人生でこんな旅する事なんてないと思ってたんで。」

そうだ桂と出逢って三津の人生は大きく変わった。こうして知らないはずの世界を知る事が出来たのも桂のお陰なんだ。

『それはそうなんやけど……。』

でも今回は桂のせいでこうなってると言っても過言ではないのでそこを感謝するのは癪に障る。

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「えっ何が!?」

「あ……すみません独り言です。」

心臓ばくばくしたと目を見開いて驚く入江にへらへら笑って謝った。入江の怯えたような表情が三津には新鮮だった。

……桂さんの事?」

「はい……こうやって旅して見ることの無かった景色を見られるのは小五郎さんのお陰やけど言い方変えたら小五郎さんのせいやし……。」

「思ったより平気そうにしちょると思ってたけど違ったな。」

「平気な訳ないですよ!信じて待ってたのに……。でも長州の為に必要な事やったって言われたらそれを飲み込むしかないやないですか……。小五郎さんは裏切ったんやないって思うしかないけど……。」

「納得は出来んわな。」

「出来ひん……。出来ひんけどこれだけ九一さんが私の為に色々してくれてるのに小五郎さんを一番にしてる私の方が九一さんに相当酷い事してるやんって思ったらぁっ……!!」

「そっちに行くん!?私は気にしとらんって!そもそも恋仲がおる女に惚れた代償なんやしそこは私が悪いんやけ考えちゃいけん!!」

『そんな自責の念に駆られんでも……。本当に人の事ばっかり気にかけて損な性格やな……。』こっちが勝手に惚れてしつこく口説いてるんだからこちらの事など気にしなくていいのにと思いながら,入江は泣きそうになった三津の頭を撫でた。

「三津さん,これは私が好きな相手がおるのを知っとるのに惚れて勝手な事しとるんやけ迷惑やぐらいに思っとればええんよ?」

「迷惑やないもん。嬉しいもん。九一さんがしてくれる事嬉しいもん。」

三津はとうとう泣きだした。嬉しいと言われたらこっちの方が嬉しいだろうが。ぽろぽろ零れる涙を拭って三津をそっと抱きしめた。

「ありがとう。三津さんのその優しさにどれほど救われたか……。」

その傷は必ず癒やしてあげると心に誓って,入江は三津の手を取りまた歩き始めた。

「景色見てその暗い気持ち消してしまい。それでも消えんのなら抱いて気持ち良くして消しちゃる。」

「最終それか。」

三津は握られていた手で入江の手をこれでもかと握った。

「痛い痛い痛い!ごめん!ごめんて!そんなんせんから!」

三津は謝罪の言葉を聞いて握り潰そうとしたのを止めた。その発想しかないのかと目を釣り上げ頬を膨らませた。

「行きの道中で抱いたら三津さん足ガクガクで歩けんくなるからなぁ。萩まで保たん。」

「阿呆っ!」

三津の拳が入江の背中に突き刺さり鈍い音が響いた。

『眠れなかった……。』

桂は胡座を掻き大刀を抱え,壁に背中を預けた状態で一晩過した。

「あらまぁ目の下にクマなんか作って男前が台無しや。」

広間に朝餉を運んで来たセツが桂の顔を覗き混んだ。

「何や桂さんここにおったんか。三津さんらの部屋で横にならんかったそ?」

欠伸をしながらやって来た高杉を桂はムスッとした顔で睨んだ。

『寝ようとしたさ……。三津の布団で寝ようとしたさ……。』

しかし三津の微かな香りに胸が苦しくなって寝るどころじゃ無かった。その隣りには入江の匂いのついた布団。嫉妬に狂って眠れやしない。その部屋に居るのでさえ苦痛だ。おまけに三津に拒絶された事を思い出し泣きそうにもなった。

三津と入江はどんな一夜を過ごしたんだろうか。気になって悶々とする。

『怒りに任せてとか腹いせにとか三津に限ってそんな理由で体を許すなどない……。ないと思うが……。』

もう自分の知ってる今までの三津ではないとするならその行動は全く読めない。

「セツさん三津はどこへ行ったんですか……。」

お願いだ教えてくれと情けない顔でセツを見る。

大人の男が泣きそうだ。